暦の計算
過去の節入り時刻などは国立天文台のウェブページに掲載されています。
暦計算室というページに様々なデータと共に掲載されているので、節入り時刻を考慮する場合には参考になります。
ただし古いデータは現在の基準で計算したものと比べると不正確な場合がありますので、現代の万年暦とは値がずれている可能性はあります。
計算精度を確認したい場合
独自に計算したものが国立天文台のものとどの程度差があるかを見る方法は理科年表に掲載されている太陽赤経、赤緯のデータが参考になります。データの提供元はもちろん国立天文台です。理科年表プレミアムという有料(4800円+税)のアクセス権を購入する必要があります。トップページの「目次から探す」「暦部」を選んで出てくる一覧から『表:太陽」を選ぶと世界時0時における視赤経、視赤緯、均時差が一日ごとに見られます。
こちらは1938年以降小数点第二位を四捨五入した十分の一秒単位まで掲載されています。1944年から1946年の戦争が激化した時期には観測が行えなかったのか掲載されていないのが印象的です。
暦として公開されているデータは大抵が分単位で30秒を境に四捨五入しています。ですので精度を見る用途には使えません。
視赤経((\alpha))、視赤緯((\delta))は次の関係式で視黄経((\lambda))、視黄緯((\beta))と相互変換できます。
「視」がつくのは太陽が発した光が地球に到着するのに時間が掛かることなどを考慮したデータという意味です。地上で観測すればこの時間、位置になるもので、古くから行われてきた目視による観測データはすべてこちらです。二十四節気もこの視黄経で決められています。
[
\begin{pmatrix}
\cos\beta \cos\lambda\
\cos\beta \sin\lambda\
\sin\beta
\end{pmatrix}=R(\epsilon_A)\begin{pmatrix}
\cos\delta \cos\alpha\
\cos\delta \sin\alpha\
\sin\delta
\end{pmatrix}.
]
ここで行列
[
R(\theta)=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\
0 & \cos\theta & \sin\theta\
0 & -\sin\theta & \cos\theta
\end{pmatrix}.
]
(R(\theta))は高校で習った回転行列の三次元版です。この場合はX軸の周りに回転したものです。
(\theta)に取るのは黄道傾斜角(\epsilon_A)で(T)をユリウス世紀数
[T=\frac{ユリウス日-2451545.0}{36525}]
で測って
(\epsilon_A=84381^”_{.}406000)
(-46^”_{.}836769T)
(-0^”_{.}00018311T^2)
(+0^”_{.}00200340T^3)
(-5^”_{.}76 × 10^{-7}T^4)
(-4^”_{.}34 × 10^{-8}T^5)
という0次から5次の項を持った多項式で与えられる値を用います。その名の通り、赤道に対して黄道がどれだけ傾いているかを表した数字です。地球も太陽も運動しているので時刻によって変化する量を必要としています。もちろん、これも観測によって得られたデータを解析して求めたものです。
注意すべきは理科年表プレミアムの視赤経のデータは時分秒で表されていることです。適宜自分の使っているラジアンや角度に直して比較できますが、比較だけが目的なら両方を秒単位で表すのが簡単でしょう。
時分秒は3600x二四時間制の時+60x分+秒で秒になります。
その秒数さえ求まれば角度は秒を240で割れば求まります。一方、角度を240倍すれば秒になります。
経度補正を入れなければ算命学の場合分単位で分かればいいですが、入れるとなると30秒単位で四捨五入されたデータでは精度に疑問が生じますね。(そこまでする意義が失われかねないとも言えます。)
理科年表プレミアムでも国立天文台のウェブページでも翌年までの節入り時刻しか掲載されないので、もっと先のデータが知りたい場合には使えないという欠点があります。また理科年表プレミアムは毎年4800円+税掛かるのもネックですね。
いずれにせよ、正確を期するにはそれなりに出費や手数が掛かります。ただ誤った命式を元にいくら考えても時間の無駄なので、正しい節入り時刻を知る価値はありますね。
より詳細な議論はこれまでに引用したことのある『天体の位置と運動 シリーズ現代の天文学 第2版 福島登志夫編 日本評論社 2017年』を参照して下さい。