算命学と天文学
算命学も「星占い」の一つですから天文学と何らかの関わりがあるはずです。この二つはどう関係しているでしょうか?
算命学に限らず、中国由来の占いでは干支を利用します。この干支の割り振りに暦を使うわけですが、暦の作成のために天文学が必要になります。
つまり算命学と天文学は暦を通じて関係しています。ではどのように関係しているでしょうか?
算命学で用いる暦
算命学では干支を用いた暦を使うことは皆さんご存じのことと思います。年末になると色々な出版社から「開運暦」が発売されます。皆さんもご覧になったことがあるでしょう。開運暦には年月日の干支と並んで二十四節気が記載されているものがほとんどです。
流派によって異なりますが多くの算命学の流派で立春(2月4日前後)を正月節として年の始まりとして採用し、以後、毎月の節入りをもって月の始まりとします。現在の暦で1月にある小寒は前年の12月節入りとします。
干支の順序は単純に並んでいるので簡単ですが、月の始まりだけは節入りが分からないと決まりません。
この節入りは太陽の視黄経が315°(立春)、345°(啓蟄)、15°(清明)のようになった時間です。この日時を得るために天文学が必要になります。
ここで天文学が算命学に入ってくるわけです。
算命学の「星」と天文学の天体
算命学ではいくつかの「星」を扱いますが、実際の天体とは関係ないと思われます。ですから「星占い」である事を忘れてしまいがちなのかも知れません。
算命学の背景思想
算命学の背景思想の一つは「老荘思想」であると言われています。(算命占法 上 上住節子著 東洋書院 2002年)
老荘思想では人が自然と一体化して働くとき、その働きが最大化されるということを教えます。暦を通じて宇宙と人とが一つであるという考え方を具体化し、凝縮した体系の一つが算命学と言えるでしょう。
地球と太陽の位置関係
算命学が使っている暦が利用しているのは太陽の視黄経だけなので地球と太陽の位置関係だけではないか、というご意見が出てきそうです。
天文学を学ぶと分かりますが、地球や太陽の運動には他のあらゆる星々の影響が入っています。もちろん、遠くの星ほど影響力は小さいですし、影響力が波及してくるまで何億年も掛かるケースも少なくないです。とにかく全宇宙の影響が積み重なったものを人間は観測しています。(精度を上げれば上げるほど排除できない要素が増えていくわけです。)
天体暦
現代天文学の重要な応用課題の一つは人工衛星やはやぶさのような探査機を打ち上げることです。探査する相手の位置が分からないことにはどう打ち上げたらいいか分かりません。
太陽や惑星、小惑星がどの時刻にどの位置でどのような速度で運動しているのかを観測し、さらに最新の物理学を利用して予測した位置と速度を格納したデータが天体暦です。
天体暦は地球を中心に考えたものも作れますが、一般には太陽系の重心を基準にしたXYZの座標で表されています。天体暦のデータを変換することで視黄経の値も得られます。天文観測の精度が上がれば節入り時刻決定の精度も上がり、算命学もより正確な命式作成ができるようになるわけです。
前回触れたアメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)の発行している天体暦も何年かに一度更新されています。重要な観測プロジェクトが立ち上がるときに、更新されることが多いようです。
国立天文台では二十四節気を始めとした数値計算にJPLの作成した天体暦DE430を2016年から採用したと発表しています。国立天文台のWebサイトにある暦の改訂について (2016) を参照して下さい。